株式会社 PASSION
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今回はバラエティから報道・情報・スポーツまでジャンルを問わず活躍の場を広げている制作会社、株式会社PASSIONを訪問。エネルギッシュな榮永英幸社長と管理部の水田英子さんにお話を伺いました。
インタビュアー:広報委員長 (株)NX・中山維夫
写真:(株)エムファーム・田村正裕
(2025年5月取材)
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Q.お話を伺う前に通常、会社訪問のインタビューでは、社長室に伺う場合が多いのですが・・・ 最初は社長室を作っていたんですが、社員との距離感を感じたり、社長室があると社員が相談しにくいのではないかとか思い、デスクをフリーアドレスにした際になくしました。
Q.まずは、最近、番組のエンドロールでPASSIONさんのクレジットをよくお見かけしますが、会社名の由来をお聞かせ願えますか? スポーツをはじめ何かを一生懸命するためには熱が必要ですよね。私は「情熱」という言葉が好きで、40歳で独立した時、「自分の生きてきた道は、熱い人生なんかな」と思って、そのまま情熱(PASSION)を会社名にしました。今ではちょっと恥ずかしいですが。
Q.ロゴにあるギザギザのついた歯車のようなマークが印象的ですが、これにも意味があるのですか? 「情熱の種」という意味なんです。「情熱の種を育てていって、みんなで素敵な花を咲かせよう!」という思いが込められております。
── ここで「株式会社PASSION」の会社概要をまとめて紹介。
Q.それでは、今や大きくなられたPASSIONさんではありますが、オールジャンルの番組を制作されております。 その会社の発展の真相を探るべく、まずはこの業界に入られた頃のお話を伺いたいのですが・・・ 私は22歳で制作会社マイプランに入社し、ドキュメンタリー畑からこの業界のスタートを切りました。日本テレビの柏木登プロデューサーが立ち上げた「スーパーテレビ情報最前線」という番組で、ADとして参加。柏木さんの秘蔵っ子として育てられました
Q.ドキュメンタリーからスタートした榮永社長、当時の制作現場はいかがでしたか? ドキュメンタリー番組ですから、取材対象者としっかり向き合うことが大切だと教わりました。ADの時に岸和田のだんじり祭を取り上げた際、「榮永は大阪出身で、和歌山の智弁和歌山で野球をやっていたのだから、岸和田は大丈夫だろ」と取材の仕込みで岸和田に3か月間住むことになりました。 ドキュメンタリーのほかに「独占!スポーツ情報」も担当。
Q.ドキュメンタリー、スポーツ番組と経験したあと、ジャンルの違うバラエティ番組の制作にすんなり移れましたか? 日本テレビの髙橋利之氏がスポーツ局から制作局に異動して「行列のできる法律相談所」を立ち上げた後、「バラエティやってみるか」とお誘いを受け、特番や「まさかのミステリー」などで演出に入りました。髙橋氏は、私がマイプランに入社したのと同じ年に日本テレビに入社していて、社会人デビューでは同期になるんですよ。彼から未だに刺激をもらっています!
Q.このような流れでPASSIONさんの制作する番組のジャンルが増えていくわけですが、会社経営において、その狙いは? バラエティをやりたい人、情報番組をやりたい人、報道をやりたい人と様々な人が会社に入ってくるじゃないですか。バラエティをやっていても年齢を重ねてきたら、ちょっとドキュメンタリーやってみたいなとか、情報番組をやってみたいなとか、気持ちの変化もありますよね。年齢が上がってきてバラエティにちょっと疲れた人が他にフィールドがないと、辞めなきゃいけないこともあるじゃないですか。バラエティしかやってなかった人に次のフィールドをちゃんと作ろうと思ったんです。それでオールジャンルで節操ないなと思われますが、そういう社員を辞めないような会社にしたいな、という思いがありました。 ただ、PASSIONを起こして最初に始めたのはスポーツ番組からでした。なぜかというと「バラエティ」て、巨大な制作会社がいっぱいあるわけですよ。数人の制作会社だと孫請けになっちゃうんですよね。しかもあらゆるところからのプレッシャーも大きい。
Q.ちなみに前職のマイプランさんから独立する際も入念に計画されたんですか? マイプランにいた時は社員が100人ぐらいいまして、制作部の部長を任されていました。
Q.それでは独立当初の苦労や不安など伺いたいと思いますが…
最初は小さいマンションの一角で、1人さみしくスタートしました。 そういう状況の中、周りのみんなが助けてくれました。例えば、スポーツ時代の同期だったり、日本テレビの髙橋氏もそうですけど、「お祝いより仕事だよね」ということで、2007年10月2日に独立して会社を興したんですけど、翌日3日放送の特番で「PASSION」とクレジットを入れてくれたり、日本テレビの仲間が支えてくれました。
Q.やはり榮永社長の強みはスポーツやその人脈ですか? スポーツ選手ともすごく向き合っていますし、日本テレビでやるスポーツ特番は弊社が仕込んだりしていますから。フジテレビの「ジャンクSPORTS」でキャスティングをしていたプロデューサーもうちにいたりします。
Q.ここからは今の榮永社長の人となりを作る基になった学生時代のお話を伺います。スポーツ業界に強い榮永社長ですが、ご本人も学生時代からスポーツに精通されていたんですか? 高校時代は智弁和歌山の野球部でした。当時、強い野球部を作るということで名将・高嶋仁監督が奈良から来られ、私の一つ上の学年から選手が集められました。
![]() 智弁和歌山高時代 野球部 Q.強豪校の野球部ですから、相当、肉体面と精神面が鍛えられたのでは? 高嶋監督はもう本当に厳しい人で、3年間は地獄でした。今では絶対に考えられないですが。
Q. これだけの試練を智弁和歌山で乗り越えられてきたので、当然、大学でも野球は続けられたのですか? もともとプロ野球選手になりたかったのですが、超一流選手と対戦してみて、プロは無理だなと思って。早稲田とか、東海大学など目指したのですが、セレクションで落ちてしまって。中途半端に大学で野球やって社会人野球やってもつまんないだろうなと思って。その分野でトップになれないんだったら面白くないなと思って野球は辞めたんです。 冬は常に野沢温泉にいて、温泉卵を作りみんなのお世話をして、昼からスキーの練習に行く感じで。その成果も出て全日本学生選手権にも一応出場しましたけどね。
![]() 大学時代 スキー部 Q.スキー部で活躍しながら、メディアを目指すわけですが、就職活動はいかがでしたか? ちょうどバブルの終わりぐらいだったので、めちゃめちゃ企業が採用するわけです。
Q.コンプライアンスという言葉がなかった当時のテレビ業界に飛び込んだ榮永社長。新人時代のお話を伺います。新人AD時代はいかがでしたか? ハードでしたね。1年間で2週間ぐらいしか家に帰れなくて。
Q.そんなAD時代から始まり、ディレクター、プロデューサーとキャリアを重ねてられるわけですが、忘れられないエピソードなどありますか? ![]() NTV 「24時間テレビ 愛は地球を救う」津軽海峡縦断リレー いろいろエピソードはあるんですが、PASSIONを設立して1年目に「24時間テレビ」で髙橋利之氏と津軽海峡縦断リレーというのを企画したんですよ。まだ、社員が数人の時で。
そんな苦労の甲斐もなく、1年目は失敗したんですよ。定置網をひっかけたり、色々あって1週間ぐらい謝罪行脚で東京に帰って来られなくて。ホント大変でした。
Q.学生時代に野球とスキーで鍛えた体力と精神力が人一倍おありだと思いますが、ハードな仕事をこなし続けられて体調面はいかがですか? ちょうど6年前に胆嚢が破裂しちゃいました。
Q.大病を患い、会社の方針をどのような形からどのような形へ変えたのですか? 会社設立の1年目から10年目までは、うちで制作する全てのVTRをチェックしてました。
私は、本来ならば人に任せるということがなかなか出来ない性分で、全ての撮影現場や収録に顔を出したりしていましたが、それをやめる事にしたんです。 そこで始めたのがゴルフなんです。
Q.それではここで社長のプライベートなことをお聞きしたいと思いますが、そのゴルフを始められたのは何年前になりますか?相当な腕前では? 約10年前。現在ハンディキャップは7です。でも最初のラウンドは140を叩きました。5回目で100を切りましたけどね(笑)。
Q.元々の素質はあったかと思いますが、ゴルフ上達の秘訣を教えてもらえますか? コロナ禍で仕事がリモートになった時に、千葉県の市原市にアパートを借りて、そこでリモートで仕事しながらゴルフをしておりました。練習場も安くて打ち放題2時間1,000円。コロナ禍の期間で一気に上達しましたね。
―― 榮永社長ありがとうございました。 ![]() Q.PASSIONに入社されて何年になりますか? 設立からいますので18年目になります。
Q.会社が産声を上げた時から管理部として会社の成長を見られてきていかがでしたか? 最初は物凄く大変と不安しかなかったです。会社は徐々に右肩上がりに成長していきましたね。
Q.5年前ぐらいから部署制にして、ギューと売り上げも上がったとお聞きましたが、管理部の方もかなり忙しくなったのでは? そうですね。管理部は経理と私で二人体制になりました。プロの経理と言える人が入ってくれて更に経理だけでなく、何でもやりますと稀にみるいい人材が見つかり、現在は助かっております。
Q.制作会社各社は新卒採用など人材面で苦労しているのですが、PASSIONさんはいかがですか? 新卒採用に関しては毎年、面接官をしておりますが、弊社は割とスポーツ経験者や地方からの応募者が多くて、割と粘り強く、覚悟を持ってきている人が多いかもしれません。
Q.水田さんから見て、一言で言うとPASSIONはどんな会社ですか? あたたかくアットホームな会社です。自分にとっては宝箱のような会社ですね。
Q.制作現場にも出られることがあるとお聞きしましたが? 現場にも出させてもらっております。設立当初は4、5人しかいなかったので、「24時間テレビ」では2、3人分の仕事をしないと回らなくて大変でした。最近は日本テレビの「Going!」や「野球中継」でAPという立場で携わっております。明日は、YouTubeの仕事で亀梨君を担当しておりますので現場に行きます。このような感じで現場のことを知った上で、スタッフの育成に繋げてます。
Q.ズバリ榮永社長はどんな社長ですか? この質問は聞かれると思い色々メモってきましたので全部読み上げますね。
Q.社長への大絶賛が止まらない水田さん。社長に何かこうして欲しいとかここを直してほしいとかありませんか? 特にはありませんが、強いて言えば、会社の場所や収録現場へ送迎することがあるのですが、道を通り過ぎた後に「さっきのところ、なんで右に曲がらなかったの?」と後出しで言ってくるので、そこはもっと早く言ってもらいたいですね(笑)。
Q.それでは最後に、PASSIONをさらに成長させるために挑戦してみたいことはありますか? 挑戦ではないですが、今年の1月と2月に、経理がいなくて私がやるしかなくて、簿記も持っていない中、全くわからなくてかなり大変でした。顧問税理士さんたちに助けられながら何とか止めずに乗り切れました。これをきっかけに数字全体をもう少し学んで経営にも携わってみたいなと。
―― 水田さん、ありがとうございました。再び、榮永社長に伺います。 人材の育成ですかね。我々の時代は、こうなりたいと全国から集まってきて、どう競争して生き残っていくかみたいなところがありましたが、今はそういう人はいないですね。
![]() あとは経営という観点かどうかわかりませんが、今のフジテレビ問題だったり、いろんなコンプライアンスの問題であったり、番組制作は今、「高速道路の真ん中を走れ!」と、言われているような気がするんです。要するに「安全に道の真ん中を走りなさい」と。「ちょっと蛇行して、ギリギリ走ってみよう」ということをしてはいけない体制になっていますよね。そうなると、別に運転テクニックはいらないし、普通に言われた通り走れる人で、制作会社はいいんじゃないかと思う人が増えると思うんですよ。
だからこそ、僕はYouTubeを始めました。そういうフラストレーションを発散するために自分の好きなフィールド、やりたいことをやれるフィールドを作ってあげようと思ったんです。 面白いことをやりたいなって思った時にテレビで出来ないのであれば、アウトプットをどこでするか。それでSNS動画班を社内で作った経緯があります。 制作会社はSNS動画制作だけだとお金にならないので、やらない会社もありますが、弊社はタレントさんやスポーツ選手からの依頼は多いです。それをどうマネタイズ出来るかが課題ですね。 あとは、オリジナルコンテンツをどこまで作れるか?みたいなところで、外国人向けのオリジナルコンテンツを作ったり、企業案件を積極的にやっています。 サブスク系やSNS動画の売上を伸ばし、今のテレビの売り上げと同じにしてテレビとSNS動画のハイブリッドでやっていかないと、制作会社は持たないと思うんですよ。そこが僕の目指すところですかね。
あと、子会社でスポーツマネジメント会社を持っております。
社内にはトップアスリートたちのお宝の数々が‥。
―― 本日は貴重なお話をありがとうございました! |
榮永社長は会社名パッションそのものでした。未だ衰えないその“情熱”をメディアを目指す多くの若者に伝えたく、今回はあえて大作にしました。
今回語って頂いた榮永社長の貴重な制作秘話は往年のテレビマンにも忘れていたあの頃の情熱を思い出せたのではないでしょうか。
情熱のあるところに人が集まり、何かが生まれる。そんな好サイクル、見本にしたいものです。取材にご協力ありがとうございました。(取材・文 NX中山維夫)
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