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広報委員が行く!会社訪問

株式会社アップフロントグループ

所在地:東京都港区東麻布1-28-12
麻布高栄ビル6F
電 話:03-6230-1500
FAX:03-6230-1501
HP:http://www.ufg.co.jp/
代表取締役会長:山﨑 直樹
代表取締役社長:瀬戸 由紀男

 

「広報委員が行く!会社訪問」第18回は、誰もが知る人気歌手やタレントを数多く抱え、歌謡界や芸能界をリードしてきた「株式会社アップフロントグループ」の瀬戸由紀男社長を訪ね、 「どういう会社なのか」、そしてまた「社長の人となり」までお伺いします。

 

それでは東麻布にある、株式会社アップフロントグループに、早速お邪魔しました。

――では、インタビューを始めさせて頂きます。

Q.まず、会社の概要についてですが、タレントプロダクションとして設立されたのは?

設立は1983年。今月でちょうど30周年を迎えました。

Q.そうなんですね、30年の節目を迎えられ、おめでとうございます。

それではここで「株式会社アップフロントグループ」の概要を―

【設立】1983年1月14日

【事業内容】持株会社として、芸能プロダクションをはじめとするエンターテイメント事業を中心と する、グループ会社(下記)の統括

【グループ会社】
(株)アップフロントエージェンシー、(株)アップフロントプロモーション、ジェイピィールーム(株)、(株)アップフロントクリエイト、(株)アップフロントワークス、(株)アップフロント音楽出版、TNX(株)、(株)オデッセー、(株)アップフロント関西、(株)アップフロントディーシー、(株)ユーファクトリー、(株)アップフロントインターナショナル、(株)アップフロントブックス、(株)キッズネット、(株)花畑牧場、(株)あじわいフーズ、(株)オデッセー不動産、(株)UJプランニング、(株)グラビティー、」アップフロントハワイ、(株)スタジオ・ケイグループ、(株)コットンクラブ・ジャパン、(株)アプタス

 

Q.これだけ大きな組織をまとめるために、コミュニケーションの円滑化を含めて、 社内で何か特徴的にやっていることを教えてください。

グループ全体で24社あるんですけど、このビルの中に、だいたい集約されているんですね。 仕事をするに当たって、例えばレコード会社はプロダクションと、常にコミュニケーションをとらないといけないし、プロダクションはファンクラブやコンサートの制作会社などともコミュニケーションをとらないといけない。
それが全部この建物の中に同居しているので、普段から顔を合わせるし、ミーティングをする機会も多いので、コミュニケーションは事足りているかもしれないですね。とりたてて、交流の場を設けたりはしていません。
ただ正月早々に、明治神宮に参拝に行くのは、恒例でずっと続けています。

そして、参拝後の新年会は、強要しているわけじゃありませんが、好きな人たちが集まって…みたいな。ただ、だいたいの社員は参加していますね。

 

ここで、社長について伺いたいのですが――

Q.社長自身のキャリアについてお教えください。

今から34年前に、当時の「ワーナーパイオニア」にアルバイトで採用されて、そのまま社員となり、制作畑、いわゆるディレクターとして働き、16年ぐらいしてから「アップフロント」に移って、今に至ります。

 

Q.具体的には、どんな歌手の方を担当されましたか?

若いときに、がんばって結果が出せたなと思うのは、ラテンピアニストの松岡直也さんですね。 それとほぼ同時期に、矢沢永吉がワーナーに移籍してきて、彼が東芝に移籍するまでの間、ずっと担当していました。あとは森高千里。それ以外にもたくさんの方のレコード制作に関わりました。 アップフロントに来てからはディレクターを2~3年しかやってないんですけど、その間にシャ乱Qなど、アップフロント所属のアーティストを担当しました。

 

Q.例えば、どんな楽曲を担当されましたか?

矢沢さんは、ワーナーに移籍してきて1年もたたないうちに、アメリカ進出をするんですね。ロサンゼルスを中心にレコーディングをして、アメリカのアルバム、シングルを発売して。そんな時期に一緒に仕事ができたのは恵まれていますよね。
森高千里はデビューからずっとやっています。シャ乱Qは、僕がアップフロントに転籍してから担当したんですけど、運がよかったのは、「ズルい女」から制作に関わったことですね。おかげさまで、すごい大ヒットになりました。

次に、音楽の現場を知り尽くした社長が特に力点おいていらっしゃる点について伺いますが――

 

Q.まず第一に、アップフロントグループ(U・F・G)の組織の特性とは?

モーニング娘。がブレイクする1998年ぐらいには、社内でだいたいのことは完結するようにしていこうということで、インフラを構築していったんです。
というのも会長の山﨑直樹は、12~13年前から、「将来的にCDの需要は少なくなるから」と言っていたんです。いま思えば、その通りになったんですが。それでCDの売り上げが右肩下がりになることを前提に、インフラを作っていったんですね。

1993年ぐらいには、レコード会社を持っていました。プロダクション業界の中でも、アップフロントは、レコード会社を持ったのは早い方じゃないかと思います。

レコード会社は大ブレイクしたら大きな利益を生むけど、プロダクションはタレントさんの給料、マネージャーの給料、衣装など、ランニングコストがすごくかかる一方で、歌唱印税や原盤印税だけでは収益が小さい。そこで、早いうちからレコード会社を持つことにしたんです。93年頃は、森高千里やスターダストレビューがメインでしたので、その意味合いは大きかったと思いますね。

モーニング娘。がブレイクした頃から、女性アイドルを積極的にデビューさせていこという方針を推し進めたんです。先ずファンクラブを独立して運営させました。それからコンサートの制作会社も自ら持ちましたね。既に出版社もありましたから、タレントの関連本を出すことも可能です。
タレントグッズやレコードのジャケット、プロモーションビデオなど、そういう作ることだけをやっている会社も最近独立させました。これは元々レコード会社にあったり、ファンクラブにあったりしたものを、全部ひとまとめにしたんです。そうすることによってコストダウンがものすごく図れますし、外部からの仕事も受けられるので、効率よく運営できています。
最近で言えば、ネット関係だけのことを事業にした「アップフロントディーシー」という会社が一昨年8月に出来ました。
ネットって次から次に移り変わるスピードが速いじゃないですか。それに対応して遅れを取らないようにして、さらに独立させることによって収益を出すことを考えさせています。

 

Q.第二として、組織の風土(体質)は?

朝礼なんかないですからね。(笑)
そのことじたいが、典型的な体質だと思いますよ。
いわゆる普通の会社のように経営のトップの人が社員を集めて、理念を語り、モチベーションを上げるような発破をかけるようなこととか、全くないですね。
自由(な体質)なのかもしれませんね。社員一人一人が、責任を持ってきちんと仕事しているからできることでしょうね。

 

アップフロントさんでは、多方面の事業を展開されていますが――

Q.やはり機軸はタレントプロダクションだと思いますが、 様々なタレントさんを抱えることでご苦労したことは?

苦労ですか。ハロー!プロジェクトを立ち上げてから、ウチは、タレントの採用は基本的にスカウトではなく、全てオーディションで採用するんです。
モーニング娘。の3期の後藤真希や、4期の辻希美など、採用されたとき中学生でしたね。
モーニング娘。のメンバーは義務教育の子が多いですから、地方からだと転校しないといけない。
でも、一人だけ転校させるワケにはいかないというのがウチの考え方で、最低でも保護者一名と一緒に引っ越してもらうということを、採用の条件にしているんです。

そしてもう一つは、授業はもちろん、学校の行事も出るのが大前提。その上で成績が落ちたら、ハロー!プロジェクトを辞めてもらうよっていうぐらい厳しくやっていて、家庭教師をつけて仕事の合間などに勉強させていました。義務教育を受けているタレントのマネジメントが慣れないことだったとは言え、最初は大変でしたね。

 

Q.反対に、この会社に所属していて魅力的だと思うところは?

ウチは基本的に音楽をやっているプロダクションなんで、あくまでもCDやレコードで音楽を世に出して、コンサートをやるっていうのが基本なんですね。
だから、新人を見つけて、デビューをさせて、一生懸命プロモーションをやり、本人たちも努力をして、ステージに立ってお客さんの前に出る。そのお客さんが歓声をあげて本当に応援してくれる。やはりココですよね。歌手本人もそうだけど、スタッフたちもですよね。ここが我々、アップフロントの一番仕事の醍醐味かなと。

 

Q.それではここで最近、大組織であるが故、時代のニーズに合わせて、大きな改編が行われたそうですね?

昨年10月、大きな組織替えをして、タレントを抱えるプロダクションを3つに分けたんです。

1.「アップフロントプロモーション」

主な所属タレント:モーニング娘。をはじめとするハロー!プロジェクト、田中義剛、森高千里、相田翔子、林マヤ、中澤裕子、飯田圭織、安倍なつみ ~ほか

2.「ジェイピィールーム」

主な所属タレント:兵藤ゆき、藤本美貴、加藤紀子、小川麻琴、真野恵里菜、高山厳、はたけ、たいせい、久住小春、KAN ~ほか

3.「アップフロントクリエイト」

主な所属タレント:堀内孝雄、ばんばひろふみ、杉田二郎、因幡晃、小俣雅子、篠田潤子、高橋愛 ~ほか

組織の原点・タレント部門を、まずは円滑化しました。

 

Q.今回の組織の改編で「アップフロントエージェンシー」という会社は、全く新しい会社に変わったんですよね?

実は「アップフロントエージェンシー」という会社は、新しい組織の中で、タレントを一切持たない会社に変わりました。
プロダクションをやっていると、雑誌の取材を取りに行ったり、テレビやラジオにブッキングに行ったりする仕事が日々欠かせません。するとそれ以外のことを考える余裕はなく、いろいろな情報をまとめて戦略に生かすような余裕もないわけですよ。
やっぱりそれじゃこれからはダメだから、「アップフロントエージェンシー」というフカンで見て戦略を考える会社をあえて作ったんですよね。これが10月からの組織替えで一番象徴的です。
こういう物見櫓みたいなものを持っていないと、取り残されてしまいますよね。

なるほど、時代の流れに即応しているんですね。

続いて、社長のプライベートについて伺いたいのですが――

Q.社長の趣味は?

音楽ですね。僕はジャズギターが好きで、中学生の頃からプロのギタリストになりたかったですね。ぜんぜんなれてないですけど。 あとは、子どもの頃から車が大好きで、運転が趣味ですね

 

Q.サーキットなどを走ったりもするんですか?

随分若い頃は、富士スピードウェイを走ったこともあります。 自分の車を持っていって走るんですけど、面白いのはヘアピンカーブを曲がると、ウォッシャータンクから勝手に水が出てくるんですよ、横Gの力で。街中で走る分では、ありえないですよね(笑)

 

Q.好きな食べ物は?

嫌いなものがないから、逆に好きなものがコレっていうものはありません。何でもOKです。
極端なこといえば、年中、朝昼晩セロリで腹いっぱいにしろって言われても問題ないです。
朝昼晩、年中カレーでもOKなんですよ。食で不満を言うことはないです。

 

ここで社員の方に、瀬戸社長と会社についてお話を伺いました。執行役員・社長室長の吉田勝弥さん(48歳)です。

Q.異業種からの転職だそうですが、元々はどういう分野にいらっしゃったんですか?

もともと銀行員だったんですよ。アップフロントで一つのプロジェクトがあって、それを銀行としてお手伝いするに当たって、2004年に出向したのが最初です。
それまでの環境と全く異なるこの会社やビジネスに魅力を感じたし、幸いにも会社から「こっちで働いてみないか」という声もかけてもらったので、銀行を中途で退社をして、アップフロントに完全に転職しました。

 

Q.この会社やこのビジネスの、どんな所に魅力を感じましたか?

銀行って基本的には、良くも悪くもルール通りやることが大切なんです。
それに対して、エンターテインメントの仕事は、ある意味ルールを離れた自由な発想の元に動けるというところに魅力を感じました。
もう一つは、私たちは例えばコンサートでは、お客様に喜んでもらって、その対価としてお金を頂戴しているワケじゃないですか。そういうベクトルの一致感、共有できるという感覚が魅力ですね。

 

Q.銀行員時代の自分から見て、一番変わったというか、学んだなと感じることがありますか?

まず、自由な発想をしてもいいんだ、逆にしなきゃやっていけないんだということが、一つ学んだことだと思っています。
そして今の立場で働いていると、グループの30社近い会社やそれぞれの事業を見て行くワケで、 物事をフカンで見ることの必要性を感じてます。フカンで見て、少し将来を見て行くということについて、意識するようになったのは、現在の仕事の中で得たことだと思います。 あとは、コンサート会場でお客さんの熱気とかストレートに感じられるじゃないですか。これは銀行員では得られないことですからね。もしかしたらこれが一番かもしれませんね。

 

Q.瀬戸さんって、どんな社長ですか?

ものすごくクリエイティブな人なんですよ。音楽のことに限らず、物事の考え方が非常にクリエイティブだし、新しいものも含め、物凄く勉強熱心だなと感じます。 「iPad mini」はもう買ったのかな?出たらすぐ買うんだって言ってましたけど(笑)

 

最後に、瀬戸社長に伺います。

Q.瀬戸社長は、アップフロントグループは今後、どんなビジョンのもとで活動し、飛躍して行こうとお考えですか?

会長の山﨑直樹が、今から12~13年前に、CDはいずれ需要が少なくなるんだから…となんとも予言者のようなことを言って、現実、そうなりましたよね。
山﨑には、長年この業界でやってきたことによって、時代の移り変わりのニオイを嗅ぎ取るような、素晴らしい勘があると思うんですね。この勘っていうのは、大事です。
そして今、世の中が急激に変わろうとしているのは、それは誰もが感じていることでしょう。
例えば、経済。日本がこんな風になるとは、誰が思ったでしょうか。
日本を代表する企業の数々も、苦戦してますよね。時代の流れが、確実に変わっています。

うちは今、オーディションを2ヶ月に1回、やってるんですけど、だいたい小学校5年生から中学生ぐらいの子が受けに来るんです。
で、スタッフがね、アンケートを作って事前に書いてもらうんですが、「最近買ったCDは何ですか?」って質問したんですよ。すると「CDは買いません」って返ってきた。
「どんなCDを買いますか?」と聞くこと自体、今は時代にマッチングしてないんです。
それと面白いのは、「このオーディションを何で知りましたか?」と聞くと、ほとんど「Youtubeです」って言いますからね。
それからこの間もオーディションで、「モーニング娘。大好きです」という子に、「最近の新曲の『One・Two・ Three』とか『ワクテカ Take a chance』って聞きましたか?」というと「大好きです」って言う。でも、「CDを買いましたか?」と聞くと、「買っていません!」という。
「じゃ配信、ダウンロードですか?」
「ダウンロードもしません」
「じゃ、何ですか?」と聞くと、「Youtubeですよ」というんです。
オーディションを受けに来て、タダで音楽を聴いてるなんてよく言うよな!?なんていうぐらい当たり前なんですよ。特に小学生から中学生は、当たり前。音楽にお金を使うことが少ないんです。
僕らは、それを売って食べてるわけですよ。どう思います?
我々が今まで商売するために、いろんなツールを使ったり、媒体と協力してやってきたことは、ほとんど今は通用しないとうことですよ。
でもYoutubeを使ってたくさんプロモーションしたからって、それがそのまま反映するとは限らない。
例えば、今やiPhoneがすごいですよね。ノートパソコンとかパソコンの時代から、タブレット端末やiPhoneが主役の時代になろうとしていますよね。そういう中で、これから1年後、2年後、5年後、10年後を見据え、我々がエンターテインメントのビジネスに、どういう風に向き合ってやってゆくかだと思います。時には失敗することもあるだろうけれど、それでも真剣に挑戦するような会社でなければいけないというのが、これからのアップフロントグループ(U・F・G)の理念ですね。

広報委員の後記!

取材を通して、株式会社アップフロントグループは時代の潮流を俯瞰(ふかん)の立場で敏感に捉え、冷静かつ大胆に企業運営に取り組んでいらっしゃる会社であると確信しました。 また社長ご自身は鋭い感性とリズム感を兼ね備えたアンテナをお持ちで、又柔軟な構えと先を見据えた太い幹で会社全体を牽引していると敬服いたしました。私自身も勉強になりました。今後の益々のご発展をお祈り申し上げます。

インタビューアー:広報委員(株)スーパーテレビジョン・松崎俊顕
写真撮影:ウッドオフィスグループ(株)岡村宇之
(2012年12月取材)