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澤田会長の一ヶ月

澤田会長の一ヶ月

『日芸就職セミナー』

先ずは、7月26日に日本大 学芸術学部で行われまし た、日本映像事業協会の就 職セミナーに出られての感 想をお聞かせいただけます か。

澤田

セミナーの内容について は、就職委員会からのレ ポートがありますのでそち らに譲りますが、芸術学部 の上滝教授や就職指導課の 方々と話をさせていただいている中で非常に興味深い話題がありました。

「学生はテレビを視ている」と。

それは意外ですね。最近の学生といえばネット依存で、テレビには見向きもしな いという印象が強かったのですが。
澤田

確かに、私が2年前まで教授を勤めていた大学でも「情報は新聞やテレビからで はなく、ネットで得る」と答える学生がほとんどで、テレビ離れを強く感じてい ました。

しかし話によれば、最近少し変わってきているとのことでした。 つまり、学生が自ら情報を集めることに疲れてしまい、ネットと少し距離を置き 始めていてる。その代わりに情報を勝手に流してくれているテレビで情報を得て いるようなんです。

テレビへの回帰なんでしょうか。
澤田

いや、学生はテレビを視ているのではなく、テレビを単につけているだけなのか も知れません。好きでも嫌いでもないんでしょうね。

学生が明確な意志を持って情報を得ようとしているのかには疑問です。学生の 持っている知識の量は相変わらず減り続けていると感じますから。

ただでさえ業界を目指している学生が減っていると言われている中、深刻な問題 ですね。

澤田

これまで、どう情報を発信するか深く考えることが出来る人材ならば制作者とし て育てることが出来ると考えていました。しかしこうなると、本当にテレビを視 ることが好きで、情報をどん欲に求めることが出来る人材をいかに発掘するかに ついて思案を重ねなければなりません。我々業界に突きつけられている課題だと 思っています。

 

『喜劇人列伝』

8月に新聞でコメディアンについて書かれていますが。

澤田

えぇ、日本経済新聞の木曜 日の夕刊に『喜劇人列伝』 として藤田まことさん、芦 屋雁之助さん、伊東四朗さ ん、藤山直美さんで4回連載 しました。

書いていてテレビ放送初期の 資料が少ししかないのに改 めて気づきました。 特にコメディアンについての 資料が少ない。

 

テレビでは初期から現在ま でお笑いタレントの活躍は目覚ましいものがあります。大ヒットした番組はまだ 多少は探せますが、1クールで終わったものなどは皆無といってもいい。各テレビ 局の社史でも作品名を探せないことすら多い。コメディアンの経歴でも映画や舞 台でスターになった人の場合は何とかなりますが、テレビで人気が出た人の場 合、いつ、どんな番組で、誰と共演して地位を固めたかになると、自叙伝を出し ている人以外は全く判らない。インタビューをしたくても、1960年代までに活 躍されていた方には鬼籍に入られている方も多く、ご本人に確認も出来ない。 ネットの情報なんかも、自分の記憶と照らして、本当に辻褄が合いませんから。

私のことについてもいろいろと書いてくれていますが、間違いが多い。

ご本人や記憶されている皆さんが元気なうちに少しでもまとめられればいいなと 考え、当時の新聞や公演プログラムを始めいろいろな資料を集めています。

資料を少し拝見しましたが、興味深いものばかりですね。
澤田

大劇場のプログラムや小さな公演のプログラムにも情報がいっぱい詰まっていま す。ご本人さえ忘れている公演やキャストが記録されていますから。

でも写真資料を集めるのは大変です。特にテレビ黎明期に活躍されていた方々の 映像資料など皆無ですから何とか集められないものか思案しています。

人気番組だったNETの「大正テレビ寄席」やNTVの「お笑いカラー寄席」なんか の録画映像が残ってればいいんですがね。好きな人が録画しているのではないか と思うので、一般の方々にも何かの機会に広く呼びかけてみたいですね。

 

『ガイドライン検討委員会』

前回の最後に少し触れたのですが、総務省の「放送コンテンツの製作取引適正化 に関するガイドライン」が発布されて1年半が経過しました。

昨年7月の第2版発布以降、総務省からフォローアップについて話が出てこないの は寂しい限りです。協会でも様々な形でフォローアップしてもらえるよう、働き かけをしていきますが、なによりもガイドラインの中身を組合員の皆さんにも良 く知っていただきたいと思っています。

そこで今回は先ず、どんないきさつでガイドラインの検討会に参加されることに なったのか伺いたいと思います。

 
澤田

検討会は元々コンテンツ流通促進協議会の中で、制作者の置かれている現状が阻 害要因の一つなのではないかと問題視されたのが発端となって、ガイドライン作 成が模索されたのではないかと考えています。

つまり、制作者の立場が余りにも弱かった。

しかし、いくらコンテンツの著作権の多くがテレビ局にあるとはいえ、制作者の 許諾なしにコンテンツを流通させられませんから、意見を集約することになった のだと思います。

それで総務省が協会や全日本テレビ番組製作者連盟、全国地域映像団体協議会、 日本動画協会といった制作者を加えたのだろうということですね。
澤田

それから以降、総務省は相当面食らったと思いますよ。

「発注書がOA後に交付された」「契約書に受注金額が明示されない」「レギュ ラー番組の制作費を一方的に減額された」「請け負っていた番組が派遣契約に切 り替えられた」

アンケートを採ってみたら、ガイドラインに盛り込まれた好ましくない事例の 数々が少なからず行われていたこととして炙り出されたのですから。

確かにガイドラインに載っている事例は身近で耳にした話ばかりだったかもしれ ません。 ガイドライン発布以降、変化があったのでしょうか?
澤田

各所の努力もあって解消された事も多いと聞いていますが、業界全体が厳しいま まの現状、更に追い打ちをかけるような事も起こっていると洩れ聞きます。

ガイドライン発布の際、折角総務省がフォローアップの重要性に言及していたの ですから頼らない手はありません。

情報を集め、協会として団交することで進展があると考えています。前回同様に なりますが、お困りの事例をお寄せいただけると幸いです。

どうもありがとうございました。

 

前回ご紹介した「笑いと健康学会」のイベントで飛び回られているのと、連載原稿の締切 に追われている中でのインタビューでした。

酷暑をものともしないアクティブさとパワーには圧倒されることしきりです。

紹介したほかにも、月刊民放に隔月(奇数月号)で連載されている、大山勝美氏との「シ リーズ対談−放送の未来のために−」では「本当に民放連の機関誌なの?」と思うような 過激な討論が載っていますので、是非ご覧になって下さい。

※『月刊民放』バックナンバー購読についてはコーケン出版(Tel.03-3261-4789)にお 問い合わせ下さい。

 

インタビュー 広報委員会編集員 岡村宇之