紙面に、まだゆとりがあるようなので、ここで少し、
このところ自分が思う事を少し書かしていただいちゃいます。
今の時期、新入社員の皆さんは入社して3ヶ月目くらいで、燃えてる一方で
そろそろ悩みも出始める頃ではないでしょうか…
一方、新卒社員をかかえる上司の皆さんはというと、
飲んだりするとよく出るセリフが
「いやぁ、今のADは、とにかくデキが悪い。俺達が若い頃はあんなんじゃ
なかったヨ…」とボヤいていたりします。
ある意味、僕も同感ですけど… しかし、よ〜く考えてみて下さい。
そのデキの悪いADは、誰が作ったんですか?
本人の元々の素質?…もちろん、あるでしょう。
でも、若者というものは(自分達の若い頃を思い出しても)そもそも
社会人として(••••••)デキが悪いものだと思いませんか?

そう、まだ経験が浅いから社会人として、仕事師として、デキが悪いだけ
なんじゃないでしょうか!?
だから、とにかく、丁寧に、慈しみながら育てましょうよ。
やさしく助言していきましょうよ。
「デキが悪い」というような人間性の根源を否定するような言い方を
まず、改めましょうよ。「デキが悪い」と言わずに「まだ経験が浅いからだね。
経験を積んで、少しずつ上を目指そう。君はできる男なんだから」とか、
言ってあげましょう。
そうやって、励ましていくうちに本人も少しずつがんばって、やがて数年経つ
うちに、ADたる体(カラダ)ができていくものです。 つまり

  1. 寝不足に強くなる
  2. 次の打つ手が見えてくる。
  3. 出来上がりのイメージを描きながら、今、やるべき事の優先順位が分かってくる。
  4. 各先輩のクセや特徴、好き嫌いが分かってきて、その対応を覚えてくる。
  5. 怒られ上手になってくる。
  6. やがて、自分がDになったら、こういう番組を作りたいというイメージ

自分の作りたい番組がリアルに出来上がってくる。
と、いった様にADの体が出来てくるのに2〜3年はかかるものなのです。

せっかく入ったADが半年くらいで辞めてしまうということは、業界では
よくあることですよね。
何故でしょう?
例えば、相撲の世界を見てみましょう。
新弟子が入ると、彼らは、まず“股割(またわ)り”といって、両足を180度開脚して
床につけるといった股関節(こかんせつ)を柔らかくする修行をさせられるそうです。
そして、これが尋常じゃなく痛くて新弟子は皆、悲鳴を上げるそうです。
それはそうでしょう。
今までの人生で使っていない筋肉を急に鍛えられるわけですから。
そして、相撲界でも、この新弟子の期間に辞める人間が一番多いそうです。
つまり、どこの業界でもはじめが肝心ということです。
人間、新しい慣れない社会に入ったばかりの時はストレスがかかり、一番
肉体的にも精神的にもキツいのです。
だから、この時期に上の者が育成を急ぐあまりスパルタで体育会的にやりすぎると「あ〜、ボクは、やっぱりダメなんだ。この仕事、向いてないんだ」と
ヘコんでしまうわけです。
学校を出て、この業界に入って使ってない脳と使ってない筋肉を急に上の者に
鍛えられて、もたなくなるのです。
そうやって、ヘコんでるADに上の者は言ってあげましょう。
「君は今、相撲の新弟子の股割りの様に使ってない筋肉を使いはじめている
最中だから、痛いんだよ。でも、初日より2日目、2日目より3日目、その
痛みは少しずつ、弱くなってるだろ。そのうちに、180度の開脚をしても
なんともなくなってくるよ。その時には、もう少しプロになってるってこと
だよ。もうすぐだ。僕も君くらいの時、そうだったよ。この僕も大した人間
じゃない。君も大した人間じゃない。一緒に大きくなろうよ。
互いにがんばろう!」と。

このテレビ業界に入ってくる若者の多くは、小さい頃からテレビを見て育って
きてやがて就職時期がきて、「おもしろそうだからテレビの仕事でもやってみようかなァ…」くらいの動機で入ってきているのが、ほとんどだど思います。
僕もそうでした。僕は放送作家として、スタートしたので、「おもしろい、
バカバカしい事を考えて、それがお金になって一生暮らせたらいいなァ…」
くらいの動機で入ってきました。
そんな風に入ってきた若者たちです。
だったら、おもしろくしてあげましょうよ。若者にこう言ってあげましょうよ、
『テレビってこんなにおもしろいんだよ。自分で作った作品が全国に流れて皆   
を楽しませて、ついでに「アレ、オレが作ったんだよ」と自慢もできるんだ 
ぜ。その上、お金までもらえるんだぜ!』と。
外で見てるより、中に入ったら、もっとおもしろかった。
そう言わせてあげましょうよ。
それが僕達、先輩の仕事だと思うんですよ。

                           おわり